色々な見方。
- viscum Okamoto

- 2 日前
- 読了時間: 4分

『ネイチャー・エフェクト』を読んで。
本が好きなので色々な書店に行くことが多く先日この本を手に取りました。
シカゴ大学の環境神経科学研究所を創設したマーク・G・バーマンによる新刊『ネイチャー・エフェクト―シカゴ大学神経科学者が教える自然と脳の驚異的な関係』を読んだ感想です。
なるべく自分個人の見解で書いてます。
フィルターやバイアスがかかった状態での見方は避ける感じで。
フェイクグリーンを置くだけで健康増進効果がある、
公園を50分歩くだけで認知機能が20%向上する、
近所に木が10本多いだけで若返る――刺激的な見出しが並ぶ一冊です。
「環境神経科学」という新しい学問分野の本、という触れ込みですが、
読んでみると中身は目新しいものではない感じでした。
1980年代から続くAttention Restoration Theory(Kaplan夫妻)とStress Reduction Theory(Ulrich)という既存の心理学的仮説に、
fMRIなどの脳科学の計測手法を足しただけ、というのが実際のところの感じに思いえました。
エビデンスとして提示できる段階にまだ達していないのではないか、
というのが率直な感想になります。
私は
研究者でもないので色々なことは言えませんが
素朴に思ったこと&具体的に、何が足りないのか
読みながら浮かんだ疑問を並べてみます。
まず、大きな点は
感覚経路の設定が視覚に偏りすぎている。という点です。
実験のほとんどは緑視率や自然の写真・映像を見せるという形で行われていて、
香り――特にBVOC(植物が発する揮発性有機化合物)を介した嗅覚からのアプローチがまるごと抜け落ちている感じがします。
日本の森林浴研究ではフィトンチッドの効果が別系統で扱われてきた感じですが、これが統合されている気配もないような。
後、
被験者のサンプルにも大きな偏りがあると思います。 実験はほぼ特定の地域、人種、地域社会性、文化的背景の違いによる差はほとんど検証されていない感じも。
あった方が良いというかとても興味があり知りたいです。
気候も生態系もまったく異なる地域での再現データは見当たらない感じです。
個人差についても同様です。
過去の記憶や経験、育った環境、嗅覚の感受性といった個体差をあまり気にかけて
いない感じで設計にまで至っておらず、「自然刺激への反応」を均質な脳の反応であるかのように思えました。(トラウマ、育った環境、嗅覚感受性の個人差)
そして、一番の所はこの辺でした。
「自然は安全で、癒しである」という前提そのものが検証されていない。
これは方法論の話というより、思想的。動物にとって自然とは、明日生きられるかどうかを賭けた生存競争の場であって、そこに「癒し」という価値づけをしているのは人間の側の意味づけに過ぎないかと。
人間が生態系の頂点にいるという感覚自体、農耕・都市化以降に獲得した認知的な驕りではないか。その驕りの上に「自然は良いものだ」という結論を先に置いてから、それを裏付ける実験を組んでいるとすれば、これは仮説形成の段階ですでに結論が埋め込まれていることになるような気がします。
*これは自己の立ち位置に対しても言えることで自問自答しております、、、
個人的に
知りたい領域として、
嗅覚受容体の個人差(OR遺伝子多型)とBVOCへの反応の相関、
危険性を感じる自然環境下での認知機能の変化、非西洋・非WEIRDサンプルでの追試、
あたりです。
この本は、その空白を埋める研究ではなく、既存の限定的なエビデンスを一般向けに拡大解釈して届けた本、というのが今のところの感想でした。
多様な方面からの「声」が大事かと思っており
真理の中、どう判断するかは個々のジャッジかと思います。
後
植物はしゃべらないので
生態系のバランスを見ながらどう取り入れていくのが良いのかも検証したいです。
そんな自己反省と共に
「自然に触れれば良い」という言葉を使う前に、その「自然」がどんな自然で、誰にとっての自然なのかを、もう一段掘り下げて考えたいです。
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