20260727|Veins in the MarginThe Olfactory Margin|Dialogue Session“Tracing the invisible through dialogue and scent.”香りと記憶をめぐる対話 ― ものづくり
- viscum Okamoto

- 8月1日
- 読了時間: 4分
先日の Veins in the Margin|Dialogue Session のゲストは、服飾デザイナーとして活動されている方でした。
お忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。
対話を重ねる中で印象的だったのは、以前からお聞きしていたデンマークでの滞在経験でした。
パーマカルチャーに関心を持ち、持続可能な暮らしや社会をデザインする考え方に触れてきたこと。
そして現在も、その価値観をものづくりへと落とし込もうとしている姿勢に深く共感しました。
現在取り組まれているのは、衣服のお直しやリペアを中心としたプロジェクト。
縫製の仕事に携わるなかで、「作り続けること」への違和感を抱き、
生産と消費を繰り返す循環について考え続けてきたそうです。
その思考の延長線上にあるのが、 既に存在する衣服を修復し、新たな価値を与える活動でした。
ポップアップやワークショップでは、
依頼された衣服を丁寧に修復し、ときにはデザインを加えながら、
新しい一着へと生まれ変わらせています。
このお話を伺いながら、 Viscumで続けている植物の副産物蒸留の取り組みと、

どこか通じるものを感じました。
本来なら役目を終えるはずだったものに、
もう一度息を吹き込み、新しい時間を重ねていく。
素材は違っても、その根底に流れる思想はとても近いように思います。
実際には、依頼される方の目的もさまざまだそうです。
「裾を直してほしい」という実用的な依頼もあれば、
「少しデザインを加えて、新しい表情を持たせたい」という相談もある。
それぞれが衣服に対して異なる記憶や愛着を持ち、
その想いに寄り添いながら手を加えていく。
その姿勢は、私には日本の金継ぎにも重なって見えました。
欠けたものを元に戻すだけではなく、
修復した痕跡までも美しさとして受け入れ、新たな価値へと変えていく。
小さなステッチや刺繍が加わるだけで、 同じ服が違う景色をまとい、着る人との関係も少しずつ変化していく。
その変化こそが、リペアの魅力なのかもしれません。
香りについても、対話の中でさまざまな考察が生まれました。
お話を伺う前は、 自然素材やオーガニック、単一植物のような、静かでシンプルな香りを好まれる方なのだろうと想像していました。
もちろんその印象は間違ってはいませんでしたが、
対話を通して感じたのは、それ以上に「日常の中にある微かな感覚」を大切にされているということではないかと
想像しました。
特別な香りを求めるのではなく、
朝の空気や植物の気配、布の質感、雨上がりの匂い。
そうした日々の中に溶け込む感覚こそが、その方にとっての「香り」なのではないか。
私の中での勝手な感覚。
そんな印象を受けました。
Veins in the Marginでは、対話を通して浮かび上がる、
その人だけの感覚や記憶を少しずつ辿っていきます。
誰かにとって正しい答えではなく、その人自身が持っている輪郭の曖昧な感覚を、香りというかたちへ翻訳していく試みですが 次回香料をお渡しするときが本格的なセッションになるのかもしれません。 偏った今の自己の記録と記憶が上書きされていく瞬間を体感しようと思います。 そして
毎回のセッションを通じて感じるのは、私自身も多くを学ばせてもらっているということ。
人それぞれが抱く感覚には正解も不正解もなく、 その曖昧さこそが、その人らしさなのだと思います。
セッションを終えたあと、その日の記憶を辿りながら、すぐに香りの調合を行いました。
完成したレシピは、まずご本人だけにお渡しします。
そして、いずれ開催する展示の場で、この対話から生まれた香りとして公開できればと考えています。
一つひとつの香りが、対話の痕跡であり、記憶の断片であり、目には見えない物語の標本になっていくことを願っています。 #VeinsInTheMargin


